第8話/はじめてのおつかい


この事件は、我が家において、というか・・・オレにとって忘れられない事件です。

今日の晩ご飯は餃子。そう決めて作り始めたヨメですが、作った中の具に対して
餃子の皮が少なかった。あわてて買いに行こうとしたんですが、手も汚れている。
引っ越してきてご近所にも慣れたし、スーパーは学校の通学路に近いし、
マユとフミの2人だけでお使いに行ってもらうことにしました。
「2人だけでいける?」と聞くと、お使いを頼まれたのが嬉しいようで、やる気満々の返事です。
子供の足で片道5分。店の中で餃子の皮を探すのに5分。帰りの道のり5分。
15分もすれば帰ってこれるだろうとよんでいました。

半分は通学路の道のりとはいえ、途中には大きなバス通りがあり、
そのバス通りを横断しないといけません。それでも2人を信じて送り出しました。

15分後。帰ってきません。20分後。家の前まで出て、前の通りを見ても2人の姿はなし。
ちょっと心配になったオレは、バス通りまで出てみることにしました。

バス通りに行くまでも2人の姿はなし。バス通りまで出ても姿無し。
2人の姿を探しているうちにスーパーに着いちゃっいました。
でも迷う道でもないし、餃子の皮が見つけられずにまだ店の中にいるのかも。
そう考えながら、スーパーの駐車場で「お店の中まで見に行こうかな?
でも2人だけで行くの嬉しそうだったしなぁ」なんて考えていると、スーパーから2人が出てきました。
フミはしっかりマユねえちゃんの手を握って、
マユのもう片方の手にはしっかりとビニール袋が握られています。
「ちゃんとお買い物できたんだな」そう思うと、余計に2人に気づかれないようにして
最後まで2人だけでやらせてあげたくなるものです。幸い駐車場が広かったので
オレの存在に2人はまだ気づいていません。
そのまま駐車場の車の影に身を隠し、マユとフミを先に行かせて、後から家に帰ることにしました。

しっかし、子供ってのなんであんなに無駄に動くんでしょう?
歌いながら軽快にスキップしてたかと思うと、突然片方が止まったり、
振り返ったり、近所の犬に挨拶したり。
そのたびにオレは見つからないように陰に隠れたりいろいろするわけです。

難関のバス通りも仲良く手をあげて渡り、家はもう目と鼻の先となりました。
その時、オレの横を一人のおばちゃんが自転車で通り過ぎました。
この時、このおばちゃんとしっかり目があったのですが、目があった瞬間にオレは
「やばい!!」と直感しました。この時のオレの出で立ちはジーンズにTシャツにロン毛に帽子。
おばちゃんはマユ達を自転車で追いかけ、近ずくなり


「変なお兄ちゃんがついてきてるよ!! 早くおうちに帰りなさい!!」


おばちゃんと目があった直後に走り出したオレを、マユ達が振り返って見つけてくれて


「あっ! パパァ〜!!」


って言ってくれたからよかったものの、完全に変質者扱いされたオレは
悲しいやら情けないやら恥ずかしいやら。
家に入るなりマユが「ママァ〜! パパがいま変な人に間違われたよ!!」って報告して
ヨメに大笑いされるし、さっきまでの楽しかった休日は、ぶっ飛んでしまいました。

でもまぁ〜物騒な事件が多い中で、自分たちが住んでいる町は、
なかなか安全なのかもしれないなと思う出来事ではありました。

タイミング悪く、オレとマユ達の関係をおばちゃんが知らないままになっていたら・・・
おばちゃんの証言を元にしたイラスト付きで



「回覧板(至急)変質者に注意!!」


なんて回されちゃったかもしれないんだよなぁ〜。
それは本当にしゃれにならん。オレは立ち直れないよ・・・
あと、マユ。学校の先生にまで「パパ変な人に間違われたんだよ!!」って報告するのはやめなさい。